【判例で学ぶ不動産取引】手付けの倍額の償還による売買契約の解除と現実の提供の要否


売主が手付倍額償還による売買契約の解除をする際には、買主がその受領をあらかじめ拒絶している場合であっても口頭の提供では足りず、現実の提供をする必要があるとした事例のご紹介です。

 

参考:H6年3月22日最高裁平4(オ)1929号

判例事項

手付けの倍額の償還による売買契約の解除と現実の提供の要否

裁判要旨

売主が手付けの倍額を償還して売買契約を解除するためには、買主に対して右額の現実の提供をすることを要する。

判決主文一部引用

民法五五七条一項により売主が手付けの倍額を償還して契約の解除をするためには、手付けの「倍額ヲ償還シテ」とする同条項の文言からしても、また、買主が同条項によって手付けを放棄して契約の解除をする場合との均衡からしても、単に口頭により手付けの倍額を償還する旨を告げその受領を催告するのみでは足りず、買主に現実の提供をすることを要するものというべきである。

「現実の提供が必要である」の解説

✅口頭による意思表示では、有効な解除とは認められない

 

売主が手付倍返しにより契約を解除しようとするときは、単に「手付の倍額を返すから、契約を解除する」と口頭や書面で意思表示しても、また、それを何回繰り返しても、有効な解除とは認められない。

 

✅必ず手付の倍額の「現実の提供」が必要である

 

たとえ買主が手付解除を拒否しているときでも、必ず手付の倍額の現実の提供が必要である。売主が、口頭の提供と解除の意思表示を何度もしているうちに買主が履行の着手をしてしまえば、売主はもはや倍返しによる解除はできなくなる。

まとめ

手付の償還の方法は、買主に対して現金を交付する場合もあれば、いわゆる銀行保証小切手を交付するなど現金の授受と同視しできる方法でも良いとされています。いずれにしてもこれを「相手方の支配領域に置いたと同視できる状態」にしなければならないということです。

 

※記事の内容は、掲載当時の法令・情報に基づいているため、最新法令・情報のご確認をお願いいたします。

【学ぶ1】手付解除とは

手付金を交付することによって、後で契約を解除できるようにすることを手付解除といいます。

相手方が契約の"履行に着手"するまでは、買主は手付金を放棄し(手付流し)、売主は受け取った手付金の2倍を返却する(手付倍返し)ことで、契約を解除することができます。この手付のことを「解約手付」といいます。

【学ぶ2】履行の着手とは

「客観的に外部から認識できるような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」と過去の判例では解釈されていて、具体的には、「他人物売買において、売主が他人の不動産を取得して登記を得たこと」や「買主が代金の用意をして、売主に物の引渡しをするように催告したこと」などがある。

 

 

この記事を書いた人

国本

桜木不動産事務所代表。宅地建物取引士。

三井のリハウス、大東建託退職後、2019年2月大阪府寝屋川市に

不動産売却専門の「桜木不動産事務所」を設立。

両手仲介を行わない不動産売却専門エージェントとして日々奔走しています。

好きなものは、阪神、浜省、森高、水無月、早く走る車。

嫌いなものは、ゴキ。