
契約解除とは、契約が有効に成立した後に、当事者の一方からの意思表示によって、契約関係を契約締結時にさかのぼって解消することをいいます。契約解除は一定の原因がなければ認められませんが、この原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
民法で定める解除原因
✅債務不履行を理由とする解除
債務不履行とは、契約によって約束した義務を果たさないことです。 債務不履行には3つの形態があります。1つ目は、契約の履行が可能であるのに履行期日に履行しない「履行遅滞」、2つ目は、履行期日にとりあえず履行はなされてはいるが、その内容が不十分なものであった「不完全履行」、3つ目は、履行が不可能となってしまった「履行不能」です。
不動産の売買契約でよく問題となるのは、前記のうちの「履行遅滞」です。例えば売買契約の決済期日に、買主が売買代金を支払うことができない場合や、売主が所有権移転登記を行うことができない場合などがこれに該当します。履行遅滞は、直ちに契約の解除が認められるわけではなく、原則として、相手方に対して相当の期間履行を催告をし、期間内に履行がなされなかった場合に初めて解除ができることになります。
✅手付による解除
不動産の売買契約においては、契約締結時に手付金として売買代金の1割程度の金銭を手付として支払われることがあります。手付金は一般的には売買代金の前払いではなく、解除権を留保するために授受されていることが多いようです。この場合の手付を「解約手付」といい、「解約手付」が授受されている場合には、買主は、売主が履行に着手するまでは手付を放棄し、売主は、買主が履行に着手するまでは手付金額の倍返しをすることによって契約の解除が可能となります。
✅契約不適合責任による解除
契約不適合責任とは、売買契約において引き渡された売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。基本的には売買契約の内容が予定どおりに実現できない場合をいい、この場合、買主に解除権が発生する場合があります。
その他の解除原因
✅住宅ローン特約による解除
住宅ローン特約とは、買主が融資の全部または一部を受けることができなかったときに、契約を解除することができるといった内容の特約事項となります。不動産売買契約書にこの住宅ローン特約を盛り込んだ際、その特約の適用を受けられる状態になると、買主は契約を解除できます。
✅クーリング・オフによる解除
不動産の売買契約には「クーリング・オフ(一定期間内であれば消費者が業者との間で締結した契約を一方的に解除できる仕組み)」があります。クーリング・オフを使うためには①売り主が宅建業者であること、②事務所など以外の場所で結ばれた契約であること、という条件があります。
クーリング・オフの期限はクーリング・オフ制度について告げられた日から8日間とされています。
✅消費者契約法による解除
消費者契約法の適用を受けるためには、売主か買主のどちらかが事業者である必要があります。事業者から重要事項について事実と異なることや不確実なことについて断定的な判断を告げられた(たとえば近く大規模な都市開発の予定があるから確実に価値が上がるなど)場合、買主が誤認して結んだ契約やその意思表示は取り消すことができます。
✅当事者の話し合いによる解除
契約書などで特に取り決めがなくても、売主と買主の話し合いで契約を解除することは可能です。両者で合意解除が成立したらその内容を書面に起こし、お互いサインをしておきます。
さいごに
一度締結した不動産の売買契約を解除するには、厳格な要件や高額な金銭の負担(違約金等)が求められます。このようなトラブルが起きないようにするには、契約締結前に契約内容を十分に確認しておくことが重要です。
契約内容の中には、特記がなければ売主にとって不利になる内容もあるので、契約内容は不動産会社任せにせず、ご自身でも必ずチェックしましょう。

国本
桜木不動産事務所代表。宅地建物取引士。
三井のリハウス、大東建託(株)退職後、2019年2月大阪府寝屋川市に
不動産売却専門の「桜木不動産事務所」を設立。
両手仲介を行わない不動産売却エージェントとして日々奔走しています。
好きなものは、阪神、浜省、森高、水無月、早く走る車。
嫌いなものは、ゴキ。