不動産を売却した時にかかる税金は5つあります。
ここでは、高額となる譲渡所得税(所得税と住民税)について、詳しく解説いたします。
課税の考え方
不動産を購入した時の金額と、不動産を売却した時の金額を比べてみます。
例えば3,000万円で購入した物件が、4,000万円で売却できたとします。
この場合、1,000万円の儲けがでています。
この儲けのことを、譲渡所得といいます。
ただし、この譲渡所得は、単純に売れた価格そのものではなく、不動産を売るまでにかかった経費、その不動産を買ったときの価格や諸費用等を、売れた価格から差し引いたものです。
税率
この譲渡所得に対して譲渡所得税(所得税と住民税)が課税されます。
譲渡所得に対してどれくらいの税金がかかるかというと、税率は20%です。
所得税と住民税は本来、最低15%から最高55%までの段階的な税率が設けられています。
しかし、不動産を売却したことによる所得については、一律20%とされています。
しかし、ここで注意しなければいけないのが、所有期間です。
所有していた期間が5年超の場合には20%(所得税15%・住民税5%)である税率が、5年以下だと39%(所得税30%・住民税9%)になってしまいます。
ちょうど5年くらいだと、きちんと計算をして、場合によっては売却時期をずらす方が得策かもしれません。
支払うタイミング
所得税と住民税は支払うタイミングが違います。
所得税は不動産を売却した年の翌年3月15日までに確定申告で支払います。
住民税の支払いはそこから3か月後の6月以降です。
この微妙な期間のズレに要注意です。
確定申告で支払った税金が全てだと思っていると、6月の住民税でびっくりすることになりますので、しっかり把握しておきましょう。
特例
譲渡所得のうち最高3,000万円までは税金がかからないというものです。
ただし、前年または前々年に同じ控除を利用している場合は適用を受けられないほか、次に述べる買換え特例や譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例とは併用できません。
さらに住宅ローン控除との併用もできないので注意が必要です。
買い替えで家を売却したときに売却益が出て、買い替え先の住宅を買うときに住宅ローンを利用する場合は、3,000万円特別控除か住宅ローン控除か、どちらかを選ぶことになりますが、どちらがより減税効果が大きいか、シミュレーションして比較しましょう。
※マイホームを売ったときの特例(国税庁HP)
住宅を売却した価格よりも高い価格の住宅に買い替えた場合、譲渡所得への課税を次回の売却時まで繰り延べられるというものです。
例えば下の例で説明すると、1,000万円で購入した住宅を5,000万円で売却した場合、差額の4,000万円が収入金額として課税の対象になりますが、売却価格より高い6,000万円の住宅に買い換えた場合は譲渡所得に課税されません。
ただし、次にその住宅を売却したときに譲渡所得が出たら、前回繰り延べた分の譲渡所得が加算されて税額が計算されます。
※この買い換え特例を利用するためには、要件をすべて満たす必要があります。
※特定のマイホームを買い換えたときの特例(国税庁HP)
売った住宅が買ったときより値下がりしていた場合など、譲渡所得がマイナスになった場合は譲渡損失が出たことになり、その年は特例によりその他の所得と相殺して所得税や住民税を減らす「損益通算」が可能になります。
さらに、売った年の所得よりも譲渡損失のほうが大きくて相殺しきれない場合は、翌年以降の所得からも繰り越して差し引ける「繰越控除」が利用できます。
この譲渡損失の繰越控除は最長3年間使えますので、売った年の損益通算と合わせて最長4年間、所得税や住民税がゼロになるか、軽減されます。
また、この譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は住宅ローン控除と併用が可能です。
※この譲渡損失の繰越控除を利用するためには、要件をすべて満たす必要があります。
※特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(国税庁HP)
不動産を売却した時の譲渡所得税(所得税と住民税)についてお分かりいただけましたでしょうか?
基本的には、購入した時の金額と売却した時の金額を比べて、儲けがでているなら税金がかかりますが、まったく儲けがでていないなら税金はかかりません。
微妙なところの場合には、減価償却の金額次第で税金がかかるかもしれませんので、税理士や税務署など専門家に相談しましょう。
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